京都芸術センターでは、2013 年度より、3年間をかけて1つの戯曲を創作する「演劇計画Ⅱ」を実施しています。委嘱劇作家はワークインプログレスやリサーチを経て、新作戯曲を創作します。ひとつのテーマに時間をかけて向き合うことで、時代を超えて読まれ、上演されうる脚力を持った戯曲がうまれることを目指しています。
2013―2015の第一タームでは、「二幕の悲劇」をテーマとして、柳沼昭徳・山崎彬が新作戯曲を創作しました。
2016―2018のテーマは、「S/F ―到来しない未来」としました。
現在、かつて、未来を想像し書かれたもの、ありえない世界をについて書かれたものが、次々と実現しているように思えます。もはや世界は既にひとつではなく、私たちがひとつの知恵を得るたびに、いくつもの新たなテクノロジーが発明され、新たな世界の課題が発見されているかのようです。
目まぐるしく変容し、無限にも思えるほど拡大拡張されていく現実世界のなかで、私たちは、目の前の出来事に即応する射程の短い言葉を連ねるだけでなく、今、目の前に横たわる課題とともに生きていくための希望を持ちなおす方法として、言葉を記すことが必要であると考えています。新たなSF、新たな戯曲を、ありえない未来を新しい根拠とともに構想する方法と捉え、そしてこれを、敢えてゆっくりと時間をかけて書くことが、ある時代を乗り越える手立てであると信じ、新鋭劇作家二名に戯曲の執筆を依頼しました。
今回は創作に際し、上演を前提とせずに、戯曲そのものを完成させてもらうことにしました。演劇の「いま・ここ」性は常にその中心的な課題ですが、こと戯曲に関しては、独立した文学作品と考えることもできます。また戯曲自体には単一の上演が付随するものではなく、時代を超え、様々な人や手法による上演可能性を、無限に孕みうるものでもあります。今回はこれらを念頭に、現実的な上演という制限に戯曲の内容をおもねることのない、自由な創作を依頼しました。
さらに今回のタームでは戯曲創作と並行し、科学と虚構についての研究の場「KAC S/F Lab.」を開設します。ここでは多様なジャンルの専門家に研究成果や実例を紹介いただき、S(サイエンス)(科学)とF(フィクション)(虚構)について、継続的に議論を行います。また、委嘱劇作家や来場者が創作・研究のための知見を深め、想像力を刺激する場として、年間数回のオープンラボを開催します。
このアーカイブウェブサイトでは、演劇計画Ⅱの記録を保存・公開しています。戯曲創作の経過や、KAC S/F Lab.の動画やレポートを公開することで、これらの記録が、本企画のみならず、多様な創作や研究の場で参照され、活用されていくことを期待しています。
一部の資料は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(https://creativecommons.jp/)に基づいて、一定条件下での自由な使用が許諾されています。
なお、このアーカイブウェブサイトは2022年まで公開予定です。
戯曲 | ラボ | その他 |
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2016 |
構想テーマを「S/F―到来しない未来」に決定し、松原俊太郎、山本健介に委嘱。両氏とともに、これからの2年の構想を練る。「SFとは何か」を個々に問い、いま何に着目したいかを参考に「KAC S/F Lab. (カックエスエフラボ)」の方向性を決定。翌3月には、3ヵ年計画の構想、委嘱劇作家を公開。「KAC S/F Lab. 」発足にあたり、キックオフイベントを実施した。 |
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4月 | |||
5月 | テーマ選定 | ||
6月 | |||
7月 | |||
8月 | |||
9月 | 劇作家選出 | ||
10月 | ラボ構想 | ||
11月 | |||
12月 | |||
1月 | |||
2月 | |||
3月 | ラボ(※2020年3月まで) | キックオフイベント | |
2017 |
リサーチ4月、「KAC S/F Lab. 」を発足。オープンラボを断続的に実施し、研究員による研究紹介やワークショップ、作家を交えたディスカッション等を行う。オープンラボの成果は、戯曲の発展のプロセスとともに、アーカイブウェブサイトにて随時公開する。11月には、本ウェブサイトで戯曲の第一稿を公開。同時に、第一稿の演出プランを公募し、選出者によるプレゼンテーションを実施する。劇作家は、初校提出後も個別にリサーチを行う。 |
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4月 | |||
5月 | |||
6月 | オープンラボvol.1「相互作用」 vol.2「計画と構想―山本」 | ||
7月 | |||
8月 | |||
9月 | アーカイブウェブサイト公開 | ||
10月 | |||
11月 | 第一稿公開 | オープンラボvol.3「現実と時間」 |
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12月 | オープンラボvol.4「計画と構想―松原」 | ||
1月 | オープンラボvol.5「習俗と寓意」 | ||
2月 | |||
3月 | |||
2018 |
精査3年目は、ラボと劇作家の個別リサーチを継続しつつ、6月に第二稿を公開。8月には、批評家や科学・虚構に関わる複数分野の専門家を招いて第二稿の合評会(公開)を行い、演劇・文芸の分野を越え、戯曲を多くの視点から捉え、議論する。 |
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4月 | 個別リサーチ(山本、~2018年9月) | ||
5月 | |||
6月 | |||
7月 | 往復書簡『「戯曲⇔演劇」解体計画』(松原、~2018年12月、新潮社「webでも考える人」にて連載) | ||
8月 | |||
9月 | 第二稿提出 | オープンラボvol.6「創作と批評」 | 合評会 |
10月 | |||
11月 | |||
12月 | 戯曲完成 | ||
1月 | |||
2月 | オープンラボvol.7「科学と虚構」 | 振り返りミーティング | |
3月 |